お姉様は○○がお好き

怖くてぎゅっと、目を閉じていた。痛く、ない…?
おそるおそる片目を開ける。眼前に迫る太刀の煌めき。そして、それを受け止める少女…? ピンク色の髪、華奢で抑揚のないスタイル。
「…電書ちゃん?」
電書ちゃんの身体ごしにお姉様が透けて見える。稲妻を身体中の端々で光らせる電書ちゃんは、現し身と虚像の狭間を揺れ動いているように見えた。
「あれほど進歩のなかったお前が、ずいぶんと成長した物だな」
お姉様が太刀を無造作に降ろす。電書ちゃんの声が震える声で返す。
「愛の力ってやつかしらね」
「え!? 僕、奥さんいるんだけど!?」
「人間愛だ、このボンクラ!」
お姉様が軽く嗤う。
「愛か、人間が作った本の中身では、マシな部類に入る物だな」
「そうよ! 愛っていっとけば大概の物語はごまかしが効くし、多少強引でも許される!」
「それ、なんか違う…」
「うるさい! お姉様が斬った桜坂さんだって愛の物語を書く人だったの! 新人ドジッ子プログラマとドSのプロジェクトマネージャーのBLなんて、桜坂さんにしかかけない題材だったのに…」
お姉様の右手から太刀が消えた。
「…BL…だ、と…?」
「え?」
「え?」
お姉様の髪と瞳が黒に戻る。僕らから目線を反らし、月を見上げた…
「わたしは… 間違っていたのかもしれないな…」
「(…ちょっとまて) 」
「わたしは、人間の可能性をもう少し信じてみてもよかったのかもしれない…」
「(…なんかいい話風にまとめようとしてないか?) 」
「彼らにはもう一度チャンスを与える事としよう」
お姉様が振り返り、闇に向かって歩を進める。僕はその背中に声をかけた。
「…BL、お好きなんですか?」
お姉様の足が一瞬止まる。
「わたしはありとあらゆる本を読む。えり好みなどしない」
そのまま歩を進めるお姉様に、僕は大声を投げつけた。
「B! L! お! す! き! なんですねー!?」
お姉様の姿が消えた。次の瞬間、僕ののど元に太刀の刃があてられていた。さきほどまでのお姉様の声とは、まえで別人のような声が背中側から聞こえる。
「だ ま れ」


こうして電子書籍界隈には平和が戻ってきたのでした。めでたしめでたし。


(バッドエンド2 あまりにもテキトー過ぎ)