あざといは、作れる?

「NASっていうの、ほしいんだけど」
じゃあ、買ってきておくね、と、何も考えずに返事をした。デスクトップとMacBook Airをとっかえひっか使うようになってから、わたしも欲しいな、と思っていたところだったからだ。返事が返ってこなかったので、お姉ちゃんの方を見る。少し首を傾けて、
「選びながら教えてくれると助かるんだけど」
いつも思うが、小首をかしげるお姉ちゃんは卑怯くさい。じゃあ、ということで、土曜日のお昼過ぎ、私たちは大須に繰り出した。正直なところ、NASなんてAmazonで買えばいいのであるが、わたしは普通の女子が洋服を見るのが好きなように、電気屋さんが好きだ。PCのパーツのようなものだけじゃなく、大須ではスイッチだけのお店やケーブルだけのお店やICや抵抗やコンデンサやトランジスタを売っているお店もある。そうそう買うことはないが、原始的な半導体はわたしにとってノスタルジーを引き起こすもので、お店を見るだけでほっこりする。お姉ちゃんを連れてアメ横のエスカレーターに乗る。エスカレーターを降りて回れ右をする。NASは3階だったっけな、と思いながら歩いていたら、おねえちゃんにシャツの裾をひっぱられた。
「なに？」
「ちょっとここ見ていい?」
ここって、とお姉ちゃんの視線の先をみる。あれですよ、高級オーディオってやつですよ。レコードの針とか売ってるんですよ。車が買えるような値段のアンプとか売ってたりするんですよって思っているうちに、お姉ちゃんはお店の中へすっと入っていった。まぁアメ横の中なので店舗は狭いのだが、高級感というものに免疫のないわたしは入ったことのないお店。