彼を登る

「上になって」
彼がぽつりと言った。ゆっくりと、彼の身体を登る。大の字になる彼の上に、もそもそと登る。上にという言葉に性的な意味はない。そのときは別の言葉を使う。彼の胸に胸を預ける。わたしの胸が、軽く潰れる。
彼は、ときどき、上になって、という。フワフワした自分の存在が、わたしの体重で実存になるのだというのだ。
首を軽く曲げて、彼のノドを甘噛みする。
彼の手が、わたしの髪を撫でる。