ガイド・ドッグ-4

「それで、クルマってどうなったんですか?」
「来週納車だってさ。どうするんだろうねぇ。興味ないって言ってるのに」
「ウチのお客さんで持ってる人いるんですけど、割と評判いいですよ。呑んでも帰れるし、終電考えなくてもいいしって」
そりゃ商売繁昌だねぇ、と返すと、そうっすね、売り上げ結構上がってるみたいです、とからりとした答えが返ってきた。
「やっぱり、タクシーって結構かかるじゃないですか。なんか話したりなさそうなのに帰らなきゃ、って話になると、やっぱりこっちもちょっと寂しいんで」
さみしい、かぁ。

ガイド・ドッグ-5

「では、こちらが契約書となります …音読いたしましょうか?」
渡された紙を隣に座っている娘婿にパスする。
「問題ないですね」
「え」
「散々レビューしたんで、見れば改変してあるかどうかはわかります。問題ないですね。要は購入費用に三年分の保険が含まれていて、保険が切れると自動運転機能が無効になります。あとは、普通のクルマと同じです」
万年筆を手に取る。娘婿が手を添えて、サインする場所を教えてくれる。二枚にサインして、あっけなく手続きはすんだ。

娘婿が店の隅で遊んでいた娘と孫娘をよびよせる。やれやれ、さっさと帰りたい。 …帰る? 店を出ると、それ、は目の前にあるようだった。娘婿がシートの場所を教えくれて、助手席側に座った。
「これ、おばあちゃんのくるまになるの?」
窓の外から孫娘の声がする。
「そうみたいだね。どんなだい?」
「うーんとね、赤いの。金魚みたいにぴかぴか」
「赤?」
 助手席にいるはずの娘婿のほうに顔を向ける。
「あ、駐車場はプリセットされてるんで、帰りましょうか」
 聞こえないフリをされた。
「右手をドアに沿って、少し前に出してください。そこに縁取りされたスイッチがあります。そう、そこ。押してください」
滑らかなリングの中に、ざらりとした感触の丸いスイッチがあった。軽くそれを押し込む。メジャーのアルペジオが鳴った。

 こんにちは。

ガイド・ドッグ-3

ハンカチを左肩に載せ、ヴァイオリンを頰で挟む。弓を張る。音叉をケースから取り出し、軽く叩く。A音が軽く鳴る。重音を鳴らして響きを聞く。スケールを鳴らして指の回り方を確かめる。
 と、玄関が開く音が聞こえた。とたとたと、廊下を走る音が聞こえてくる。
「おばあちゃん、バイオリン弾いてる! きらきら星弾いて!」
 きらきら星って気分じゃないんだがね、と思いつつ、頭の引き出しから、きらきら星変奏曲の楽譜を取り出す。ちょっと待って、という声がして、ランドセルを床に置く音、がさっと物を取り出す音がする。ややあって、いいよ、という声がした。ワン、ツー、スリー、フォー、と声に出して、ゆっくり目にドを鳴らす。少し遅れてリコーダーの音が付いてくる。ええと、小学生の楽譜ってどうだったかな、と思い出しながら弾く。振り落とさないように、ゆっくりと弾く。How wonder what you are!とフェルマータ。音がなくなり、どん、と足にしがみつかれた。
「こら、ヴァイオリンを持ってるときは、ドンはダメって言ってるでしょう?」
「だって、楽しかった!」
しょうがないねぇ、と言いながら、左手で頭を撫でる。子どもの髪の毛は、なんとさらさらとしていることなんだろうか。

怒っても、放流しない主義

基本的には怒ってもネットには流さない方向でおります。
ということを友人と話したら、「いけないと思ってるの?」といわれまして、いや、そうではなく。「多数派工作しなかったんですか?」と聞かれたこともありましたが、そうでもなく。


そもっそも、多数派工作とか意見表明とか興味ないんです。


ネット(というかSNSですね)で怒ったら、それにたいする反論に時間割かなきゃいけないですし(律儀に対応するので)、怒ったって誰も影響されやしないんだから、それを目にする人に申し訳ないというか、その人の時間の無駄ですよね、という感覚。


本当に腹を立てるようなことがあれば、何らかの形で作品に昇華させてばらまく、そこまでやれないなら、そのぐらいの怒りだよね、って感じです。(その手前に友人に愚痴る、というのがありますが)


別に、怒り発言のRT乱発する人が悪いとは思っていませんが、個人的にはめんどくさいんでフォロー外すなりミュートするなりします。つまんないことでつながりなくなるのって、本当につまんないじゃないですか。

合コンのオフサイド

「わかってるよね」
「わかってるよ」
「いっつもそう言ってる」
「今度は本当」
「絶対だよ」
 メグが何度も念を押す。
「サッカーの話は」
「しません」
「合い言葉は」
オフサイドってよくわからなくってぇ〜↑』
 しなを作って半音上げてみたが、メグの視線は依然厳しいままだ。確かに私は何回か合コンを潰した。…3回くらい? いや、4回だったかもしれない。まぁ5回の可能性も否定できない。人数あわせとはいえ、呼んでもらえるだけで感謝するべきなのだ。そこは理解している。しているが…


…『そーゆーバカなフリしてるのが、あなたに彼氏ができない原因じゃないですかね』、って言ったら殺されますかね(´・ω・`)


「いやぁ、プレミアとチャンピオンズリーグしか見ないよ。他はレベルが低すぎて」
「すごーい、生観戦してないのにレベルわかるなんて、通ですねぇ〜↑」


 ロスタイムはゼロだった。延長戦もなし。
「……」
「……」
「……努力は認める」
「…ありがとうございます。恐悦至極に存じ上げます」
「……」
「……」