ラインブレイク

インター出口にも、待ち伏せがあるでしょう。ランプを滑り降りながら、トウカが続ける。封鎖される前に、すり抜けるしかありませんね。自然に僕の右手がホルスターに伸びた。封筒を膝におき、弾倉をポケットから取り出す。セーフティを確認して、弾倉を装着した。
トウカの予言は現実のものとなっていた。トールゲートの向こう側にゆっくりと動く車が二台見えた。トウカがアクセルを踏みつける。グリーンのゲートは二つ。右か、左か。
トウカがアシスタをコールした。
Assista, crack the 1st gate.
左に急ハンドルを切り、カウンターを当ててレッドのゲートに突入する。バーがフロントガラスに接触する数センチ手前で上がり始めたが、結局はルーフにあたって砕け散った。
ゲートの向こう、グリーンのゲートの裏にいた二台の車は、こちらの動きを察知して方向を変えようとしていた。下道で後ろにつかれると厄介だ。親指がセイフティを外す。が、トウカの動きは僕よりもずっと素早かった。頼みます、と、トウカは発し、ICCをセットしてAKの遊底を引いた。ドアをバカンと開けて仰向けに身を乗り出す。トウカは天井に両足の裏、シートの座面に腰を押し付けて、車外に飛び出した上半身でAKをホールドした。僕は慌ててステアリングとトウカの足首を握る。ドアアラートがビービー鳴るなか、トウカは呼吸を停止し、タタタ、タタタ、と3発ずつ撃った。後ろのクルマの姿勢が乱れる。すかさずトウカがグレネードランチャーから発煙弾を撃ち込んだ。二台の追跡車は完全に煙の中に閉じ込められた。が、遠くでタン、近くでパンという音がして、今度はこちらのクルマの姿勢が傾き、ハンドルにトルクがかかった。まっすぐ走らない。クラスターにはTPMSの警告が点いている。タイヤをやられたらしい。
トウカがAKの弾倉を抜き、一発空に撃って薬室を空にした。シートに座りなおし、ドアを閉める。ステアリングをトウカに預け、代わりにAKを受け取る。後ろを振り返る。煙幕のなかから追走してくるクルマはいない。トウカはステアリングと格闘しつつアシスタをコールした。
Assista, call satellite.