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お姉さんが私の服のボタンを外し、服をぽいぽいとカゴに放った。素っ裸だ。入ってていいよ、といわれたので、バスタブに浸かる。
お姉さんは、新しいブラシで自分の髪を梳きはじめた。その時初めて私はお姉さんの髪の色が赤いことに気がついた。
お姉さんが髪を梳き終え、頭の上にさっとまとめて、ドボンとバスタブに浸かった。ざぶざぶとお湯がバスタブから溢れる。いけないことをしているような気分になったが、お姉さんは気にもとめていないようだった。さらに蛇口からジャバジャバとお湯を出して、ビニールの袋を切った。お姉さんが袋の中身をバスタブにあけると、みるみるうちに水は乳白色になり、泡立った。
くまなく、まさしくくまなく洗われた。ひゃあ、と声が出て恥ずかしかった。そんなところまで洗われると思ってなかったからだ。ともあれ、私は全身を数回ずつ洗われた。要するに、お姉さんの求める状態にたどり着くには、一回二回では足りないくらい私は薄汚れていたのだ。

バスローブを羽織らせてもらい、爪を切ってもらう。パチン、パチンと切りそろえられていく。足の爪も切られた。
「なんで、こんなことするの?」
「個人的にはネイルもしたい」
「いみわかんない」
「わかんなくていいよ」
爪を切り終えたお姉さんはもう一本のタバコに火をつけて、ドライヤーを取り出した。
「あー、くそ、子供の髪ってすげぇなぁ。洗ってドライするだけでコレかよ」
言葉を文字にすると忌々しげだが、お姉さんの言葉には歌うような響きがあった。私は髪の毛は重くてベタベタするものと思っていた。お姉さんがはい、おしまい、と言ってドライヤーを止めると、頭がかるく、フワフワしていて何か、落ち着かなかった。